
愛媛県松山市で30代の会社員の男性が、SNSで知り合った「投資家」を名乗る人物にだまされ、約1400万円相当の暗号資産を騙し取られるという事件が発生しました。 警察はSNS投資詐欺事件として捜査を開始していますが、このニュースを読んで、私は自身の過去の被害経験を思い出し、複雑な思いを禁じ得ません。
「暗号資産(仮想通貨)はブロックチェーン上にすべての取引記録が残るのだから、追跡できるはずじゃないか?」
「なぜ犯人を特定して、お金を取り戻せないのか?」
このもどかしさは、被害者でなければなかなか理解できない感情かもしれません。今回は、この事件を題材に、「暗号資産詐欺の現実」と「被害回復の難しさ」 について、経験者の視点から深掘りしてみたいと思います。
事件の概要と、巧妙化する詐欺の手口
まずは、今回の事件のおさらいです。
- きっかけ: SNS上の「株式投資を教える」という投稿に誘われる。
- 誘導: 別のSNS(LINEやTelegramが主流)に移動し、細かい指示を受ける。
- ダウンロード: 相手が推薦する偽の投資アプリをインストールさせる。
- 初回投入: 最初は小さな金額(今回は50万円)を投入。アプリ上では「利益」が表示され、信用させられる。
- 大金投入: 「もっと稼げる」と励まされ、巨額(約1350万円)を追加投入。
- 発覚: 銀行からの不審取引の確認電話で被害に気づく。
この手口の核心は、「見せ金」 です。アプリ上に表示される利益は全て絵に描いた餅。詐欺師が后台で自由に数字をいじっているだけです。被害者は自分の資産が増えていると錯覚し、興奮と期待感から冷静な判断力を失い、さらに大金を注ぎ込んでしまうのです。
暗号資産は追跡できる?それならなぜ捕まらない?
ここが最大の疑問です。私自身、被害に遭った時、真っ先に思ったのは「ブロックチェーンはすべて公開されているんだから、すぐ追えるじゃないか!」ということでした。
その通りです。理論上、被害者の暗号資産が送られたウォレット(財布)アドレスは特定でき、その資産がどこに移動したかもほぼリアルタイムで追跡することが可能です。
- 詐欺師は、盗んだ暗号資産を複数のウォレットに分散させ(「ミキシング」や「サラダ」と呼ばれる手法)、取引所に流入させます。
- 日本の仮想通貨交換業者は、警察からの照会があれば、その口座の利用者情報を開示し、資金の流出を防ぐための協力(口座凍結など)をします。
では、なぜ解決が難しいのでしょうか? 最大の壁は 「海外」 です。
日本の警察が動けない「海外」という高い壁
詐欺師は当然のように海外の取引所を利用します。その場合、状況は一変します。
- 司法権の及ばない領域: 日本の警察は、外国の取引所に対して直接強制捜査や口座凍結の命令を出す権限はまったくありません。
- 国際捜査共助(MLA)という煩雑な手続き: 海外の取引所から情報を得たり、資金を凍結したりするには、国際捜査共助という手続きが必要です。これは、日本の警察庁から外務省を経由し、相手国の政府機関を通じて行う非常に時間と労力がかかるプロセスです。
- 対応する気のある国とない国: すべての国が迅速に協力するとは限りません。詐欺師は、こうした捜査が難しい国や地域を選んで活動しています。
「気弱な政府外交とは違う日本警察の力を見せて欲しい」というコメントには共感します。警察官の方々も現場では尽力されているでしょう。しかし、現実問題として、外交ルートに頼らざるを得ない部分が大きいのです。これは警察のやる気や能力の問題というより、国家主権という現代国際社会の根本的なルールに起因する、構造的な問題なのです。
私たちにできること~被害に遭わないための絶対原則~
では、私たちはこの現実にどう向き合えばいいのでしょうか? 最も現実的なのは、「絶対に騙されない」という一点に尽きます。
- SNSの誘いは全て疑う: 「必ず儲かる」「初心者でも簡単」といった言葉は、最も危険な香りです。SNSで知り合い、一度も会ったことのない人物からの投資話は、100%詐欺だと思ってください。
- 不明なアプリはダウンロードしない: 公式のアプリストア以外からダウンロードさせるアプリは極めて危険です。特に、所謂「Exness」「MT4/5」などと偽った投資アプリには注意が必要です。
- 「運用」と称して直接送金させない: 正当な投資サービスであれば、入金は必ず取引所の公式口座へ行います。「このウォレットアドレスに送って」という指示は詐欺の確実な証拠です。
- 少しでも怪しいと思ったら即相談: 誘いを受けただけであれば、被害はありません。迷ったら、ためらわずに 警察相談専用電話 #9110 に電話しましょう。最寄りの警察署の生活安全課などにも相談できます。
まとめ:騙されないことが最強の防御
暗号資産は確かに追跡可能ですが、それは「犯人が特定できる可能性がある」というだけであって、「簡単に資金が戻ってくる」ことを保証するものではありません。国際的な犯罪のハードルは想像以上に高く、被害者の無力感は計り知れません。
この事件は、SNSが当たり前になった時代の新しい犯罪の形を如実に示しています。「お金の話」で絡んでくる見知らぬ相手には、どれだけ親切にされても、絶対に心を開いてはいけない。 この強い疑念と警戒心こそが、あなたの資産を守る最強の盾となるのです。
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