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「株式投資に興味を持っていた80代の男性が、SNSを通じて知り合った人物に勧められ、約9800万円を騙し取られた」

この短いニュース記事には、現代を代表する凶悪な詐欺のすべてが凝縮されています。静岡県東伊豆町で起きたこの事件は、単なる「高額な詐欺被害」という枠組みを超え、私たちの社会が向き合うべき重要な課題を投げかけています。

「興味」を餌に、ゆっくりと忍び寄る罠

被害にあった80代の男性は、もともと株式投資に興味を持っていました。ここが最大の突破口です。詐欺師たちは、SNSや検索連動型広告を使い、「投資に興味がある人」を的確にターゲティングします。まるで、熱帯草原で弱った動物を嗅ぎ分けるハイエナのように。

男性が8月上旬にアクセスしたサイトは、一見するとまともな投資情報サイトだったかもしれません。しかし、そのほんの小さな入口から、詐欺師のLINEアカウントへと誘導されました。ここから、周到に準備された「信頼構築」のステージが始まります。

1ヶ月、十数回に及ぶ「洗脳」のプロセス

「9月下旬までの1カ月間に十数回に渡って振り込み」——この一文が示すのは、これが単なる一度の騙し討ちではなく、継続的な「関係性の構築」と「心理操作」であったことです。

  • ステップ1:共感と専門性のアピール
    「ご自身でもうけたいですよね」という共感から始まり、難しそうな経済用語を交えながら「専門家」としての立場を強調します。親身に相談に乗るふりをして、信頼を勝ち取っていくのです。
  • ステップ2:小さな成功体験(に見せかけた)の付与
    最初は少額の「利益」を報告し、「ほら、本当ですよ」と実績を見せることで、疑念を霧散させます。これは次の大きな金額を引き出すための、ほんの少しの餌に過ぎません。
  • ステップ3:焦りと追い込み
    「今だけのチャンスです」「次はもっと大きな案件が来ます。今資金を用意しないと取り残されますよ」——こうした焦りを煽る言葉で、冷静な判断を鈍らせます。十数回も振り込ませる背景には、この心理的な追い込みがあったはずです。

9800万円という桁外れの金額は、一夜にして消えたのではありません。信頼という名の糸で少しずつ、少しずつ、引き出されていったのです。

「違和感」が救ったもの、そして失われたもの

そして、ついに男性は「アカウントとのやり取りに違和感を覚えた」。
これは非常に重要なポイントです。どんなに巧妙な詐欺でも、どこかでほころびは生じます。その「ちょっとした違和感」に気づき、警察に相談した男性の行動は、正しく、そして勇気のいる決断でした。

しかし、ここで私たちは考えなければなりません。被害は、お金だけでは測れないということを。

この80代の男性は今、どのような心境でしょうか。
・騙された自分への恥ずかしさと後悔
・大切な老後資金を失ったという絶望感
・ご家族への申し訳なさ
・周囲の目を気にする孤独感
――こうした精神的ダメージは、経済的損失よりも深く、長く尾を引くものです。

警察への要望:捜査だけでなく、寄り添うメンタルケアを

ここで冒頭のタイトルに込めた願いを再確認したいと思います。

「警察は捜査だけで無く、被害者のメンタルケアもしっかりとお願いします。」

警察の役割は、犯人を逮捕し、被害金の返還を目指すことだけではありません。特に高齢の被害者にとって、警察は最初にSOSを出す、数少ない公的機関です。詐欺に遭った被害者は、心に深い傷を負っています。彼らを「うかつな被害者」としてではなく、犯罪の「受害者」として、尊厳を持って接し、その心理的負担に寄り添うサポートが不可欠です。

警察官の一声が、「あなたは悪くない、よく相談してくれました」というものであれば、それはどれほど救いとなるでしょうか。専門のカウンセラーとの連携や、被害者支援団体への紹介など、「心のケア」こそが、被害者が再び立ち上がるための最初の一歩を支えるのです。

私たちにできることは?「SNS上で知らない相手から投資などの話が出たら詐欺!」

警察も呼びかけるこのフレーズは、もはや現代社会の常識です。これを肝に銘じましょう。

  1. 知らない人からの誘いは、100%遮断する: 美味しい話には必ず罠があります。LINEやInstagramでいきなり投資話を持ちかけてくる人は、例外なく詐欺師です。
  2. 家族や友人に相談する: 詐欺師は「ここだけの話」「秘密にしておかないとチャンスが逃げる」と孤立させようとします。怪しいと思ったら、必ず信頼できる人に相談しましょう。
  3. 「興味」を狙われることを自覚する: 自分が関心を持っている分野こそ、詐欺の標的になりやすいということを常に頭に入れておきましょう。

静岡の80代男性の被害が、ただの「他人事」の事件で終わらせてはいけません。これは、誰もが陥りうる、現代の「デジタル罠」の実態です。そして、被害者が二度と傷つかない社会をつくるためには、捜査と並行した心のケアというセーフティネットの重要性を、改めて認識する必要があるのではないでしょうか。

あなたのその「興味」のその先に、罠は待っているかもしれません。

Let’s redoing!

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