近年、日本で深刻な社会問題となっている特殊詐欺。その被害額は膨大で、昨年の被害額は約3,000億円と、過去最悪を記録しました。この巨額の被害の背景には、国内だけでなく、海外を拠点とする組織的な詐欺グループの存在が深く関わっています。
「国際的な特殊詐欺対策が遅いのではないか」という批判がある中で、警察庁がようやく本腰を入れ、国際的な取り組みを強化し始めたことは、犯罪のグローバル化に対応するための大きな一歩と言えるでしょう。
先日、東京都内で開催された国際会議で、警察庁の楠芳伸長官が示した強い決意と、国際連携の重要性について掘り下げていきます。
🤝 犯罪者に国境なし：国際連携の「待ったなし」の重要性
10日に東京都内で開催された特殊詐欺対策の国際会議で、楠警察庁長官は基調講演を行い、「関係国が連携して迅速に対応することが極めて重要」と訴えました。
この長官の言葉は、特殊詐欺がもはや一国の警察力だけで解決できる問題ではないという、厳しい現実を反映しています。詐欺グループは、資金洗浄や指示系統の隠蔽のため、フィリピン、カンボジア、タイなどの東南アジア諸国を拠点とすることが増えています。
詐欺師たちは、国境という地理的な壁を利用して、自らの身を守ろうとします。彼らを逃さないためには、私たち警察側も、その壁を乗り越える「グローバルな捜査網」を構築する必要があるのです。
🔢 数字が示す現実：過去最悪の被害と摘発事例
楠長官は、昨年（2024年）の日本国内の詐欺被害額が約3,000億円に上ったという衝撃的な数字に触れ、「組織的詐欺は地球規模の重要課題」であると強調しました。
一方で、国際連携による前進も見られます。
- 摘発実績： 警察庁によると、昨年以降、東南アジアを拠点に日本向けの「ニセ警察詐欺」などに関与したとして摘発された容疑者は、今年10月時点で計104人に上ります。
この100人を超える摘発実績は、警察が水面下で国際的な情報共有と捜査協力を進めてきた証であり、大きな成果と言えます。しかし、これは氷山の一角に過ぎません。組織のトップや資金源を完全に断つためには、さらなる連携強化が不可欠です。
🌐 国際会議の意義：情報と事例の共有
今回の国際会議には、日本以外にもカンボジア、フィリピン、タイなど計14か国と、**国際刑事警察機構（ICPO）**を含む3機関が参加しました。
このような場が設けられたことの意義は非常に大きいと言えます。
- 実態の共有： 各国が把握している犯罪組織の「実態」を共有することで、詐欺グループがどの国を中継地や拠点として利用しているのか、そのネットワークの全体像を把握できます。
- 摘発事例の学習： 各国の「摘発事例」を共有することで、成功した捜査手法や法執行のノウハウを相互に学び、今後の共同捜査に生かすことができます。
参加国が増え、情報が迅速かつオープンに交換されるほど、「犯罪者を逃さないための網を世界中に張り巡らせる」という長官の呼びかけが現実味を帯びてきます。
🚀 今後の期待：組織の壊滅を目指して
被害が拡大し、長期間にわたり市民を苦しめてきた国際特殊詐欺に対し、ようやく日本の警察が国際的なイニシアチブを発揮し始めたことは、私たちにとって希望の光です。
私たちの真の期待は、末端の実行犯の摘発に留まらず、詐欺組織の指示系統、資金洗浄ルート、そして収益を上げるためのインフラ（コールセンターや技術）を根底から叩き、組織そのものを壊滅させることにあります。
国際的な連携による捜査の強化が、一刻も早く実を結び、特殊詐欺の被害がゼロになる日を心から願っています。警察と関係各国機関の迅速かつ徹底した対応に、今後も注目していきます。
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