
セキュリティ強化の必要性と業界へのインパクト
金融庁と日本証券業協会が、顔認証や指紋認証などの生体認証(パスキー)やPKI(公開鍵暗号基盤)を必須化する指針案を発表しました。背景には、犯罪組織による証券口座の不正アクセス被害の急増があります。
2024年4月には2,932件もの不正取引が発生し、顧客の株式が勝手に売買される事件が相次ぎました。その後、主要証券会社が多要素認証(MFA)を導入した結果、6月には783件まで減少しましたが、被害を受けた証券会社は17社に拡大しています。
この指針案は、ログイン時や出金時に生体認証やPKIを義務付けるもので、対応できない証券会社は行政処分の対象となる可能性があります。つまり、事実上のルール化が進むことになります。
【なぜ生体認証が必要なのか?】
1. 従来の認証方式の脆弱性
これまでの証券口座のセキュリティは、「ID+パスワード」やSMS(ショートメール)によるワンタイムパスワード(OTP)が主流でした。しかし、フィッシングサイトでID・パスワードを盗まれたり、SMSを盗聴されるケースが後を絶たず、犯罪者に簡単に突破されるリスクがありました。
2. 生体認証のメリット
- 偽造が極めて困難(指紋や顔データは個人ごとに唯一無二)
- パスワードを覚える必要がなく、利便性も向上
- PKI技術により、通信の暗号化が強化される
楽天証券では、5月に認証強化を実施して以来、不正取引がゼロになったと報告されています。
【生体認証導入の課題】
1. 中小証券会社への負担が大きい
生体認証の導入には数億円、運用コストも年間1億円以上かかると見られています。
- 中堅・中小証券会社:「自社だけではネット取引の継続が困難」(ある中堅証券幹部)
- 新規参入を検討していた会社:「コストを考えると参入を断念せざるを得ない」
2. 犯罪者との「いたちごっこ」は終わらない
大手証券のIT担当者は、「犯罪者の手口はさらに高度化するため、対策との攻防は続く」 と指摘しています。すでに海外では、「ディープフェイク(AIによる顔画像偽造)」 を使った生体認証突破の事例も報告されています。
3. ネット証券と対面証券の補償格差
- 対面型大手(野村・大和・SMBC日興など)
→ 「原状回復」(不正売却された株を同じ数量で戻す) - 営業担当者が個別対応できるため可能
- ネット証券
→ 「金銭補償」(全額補償は難しく、過失割合に応じて部分補償) - 人員が少ないため、原状回復が困難
この差は、顧客の信頼度に影響する可能性があります。
【今後の展望】
1. セキュリティ対策が証券会社選びの基準に
消費者は今後、「どの証券会社が最も安全か?」 を重視するようになるでしょう。
2. 業界再編の可能性
- コスト負担に耐えられない中小証券は、M&Aや事業縮小を迫られる
- クラウド型セキュリティサービスの需要が増加
3. さらなる技術進化が必要
生体認証だけでは不十分で、「AIによる異常検知」「ブロックチェーン技術の活用」 など、次世代の対策が求められます。
【個人投資家が取るべき対策】
- 生体認証を積極的に利用する
- 可能な限り顔認証・指紋認証を設定
- フィッシング詐欺に注意
- 不審なメールや偽サイトにID・パスワードを入力しない
- 取引履歴を定期的に確認
- 不正取引があればすぐに証券会社に連絡
「セキュリティと利便性の両立」は可能か?
生体認証の義務化は確実にセキュリティを向上させますが、コスト面や今後の犯罪者の進化を考えると、まだ過渡期と言えます。
「乗っ取り対策は終わりがない」 という認識を持ちつつ、証券会社には継続的な投資を、個人投資家には警戒心を持った利用を求めたいところです。
これからも技術と犯罪の攻防は続くでしょうが、「安全な投資環境」をどう築くかが、金融業界全体の課題となっています。
Let’s redoing!
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