
「内閣府が進める国家的プロジェクト」「500億円規模の案件」。
そんな言葉に、誰が疑いを抱くだろうか。さらに「トランプ政権の幹部にも顔が利く」と言われれば、つい信じてしまう人もいるかもしれない。
10月30日、警視庁はコンサル会社「バー・トレーディング・ジャパン」の社長、長谷迅容疑者(53)を詐欺容疑で逮捕した。石垣島再開発事業と偽り、50代女性社長から保証金名目で1億2600万円をだまし取ったという。しかし、これは氷山の一角だった。同社の口座には約10社から14億円以上が入金されており、警視庁は同様の手口による詐欺が繰り返されていたとみている。
高級ホテルで紡がれる「夢の話」
長谷容疑者の手口は、ある意味で古典的だった。
都心の高級ホテルのラウンジで、経営者や投資家に対し、「まだ世の中に知られていない投資案件がある」と持ちかける。過去のメディア取材記事を見せ、実績があるように装う。内閣府や国家プロジェクトといった“権威”をちらつかせ、疑う余地をなくしていく。
しかし、その話は「全くのデタラメ」だった。女性社長が誘われた「石垣島再開発」は実在せず、1億円超の資金は戻ってこない。
サッカー界の“有名人”という顔
この事件で注目されるのは、長谷容疑者が「サッカー界ではよく知られた人物」だった点だ。
有名実業団でプレーし、ブラジル留学の経験も持つ。現役トップにはなれなかったものの、帰国後はサッカースクールの経営に携わり、昨年からは「ワールド・フットボール・フェスティバル」という国際ジュニア大会を主催。ブラジルの強豪サントスやJリーグの下部組織も参加する、一見すると華やかなイベントだった。
「子供たちに夢を与えたい」
今年3月、福岡で開かれたウェルカムパーティで、長谷容疑者は主催者代表としてそう語った。大使館関係者や企業幹部など300人が集まる中、彼は「善意のサッカー関係者」として振る舞っていた。
二面性:情熱家と“大ぼら”の男
しかし、その裏では、別の顔がのぞいていた。
大会協賛のJALの役員名刺を見せ、「上層部に知り合いが多く、飛行機代を支援してもらっている」と周囲に話す一方、映像制作会社や旅行代理店への支払いは滞り、トラブルになっていたという。
関係者はこう証言する。
「サッカーに対する情熱は間違いなくあった。ただ、儲け話が大好きで、話を大きく盛る癖があった」
国や自治体への陳情では「サッカーを通じた教育を支援してほしい」と訴え、「元サッカー選手の善意の実業家」として信じ込ませていた。サッカーへの愛までもが、詐欺のための道具にされていたのだ。
権威と人脈を装う最終兵器:「トランプ政権」
そして、最近の長谷容疑者の“口癖”が、さらにこの事件を象徴している。
「トランプ政権の幹部に顔が利く」
「国際政府間組織の活動をしているから守られている」
権威ある名前を借り、自分が“特別な存在”であることを印象づける――。
かつては「内閣府」や「JAL」を使い、最後には米国大統領の名まで飛び出した。だが、そんな“コネ”も、ブラジルからの帰国時に待っていた逮捕からは何も守ってはくれなかった。
私たちは何を学ぶべきか
この事件は、「権威の名前」にだまされないことの大切さを改めて教えてくれる。
「国家的プロジェクト」「超大物政治家のコネ」――そうした言葉は、往々にして人を盲目にさせる。そして、実績や社会貢献活動をしている人物でも、その背景に別の目的が隠されていることがある。
もし「絶対に儲かる話」を持ちかけられたら、一呼吸置いて考えてみてほしい。
それは本当に存在するのか。公的機関に確認できるのか。それとも、誰かが巧みに紡いだ“夢の話”なのか――。
長谷容疑者は、サッカーへの情熱とビジネスの欲望を交錯させ、最後には自身の人生までも二重に演じることになった。
「顔が利く」と豪語したその男は、法の網にかかるとき、何を思ったのだろうか。
Let’s redoing!
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